あんこ日記

仕事も育児もほどほどのゆるワーママ

『モモ』は児童文学ではない。

本を読みたいと思っているのに、以前ほど読めていない。Kindleアプリを使い始めて、どんどんダウンロードしているのに、読むスピードが追い付いていない。まるで、食べもしないものを「念のため!保存用に!いつかいるかも!」とため込むタメコミアンになってて、Kindleのライブラリは大混乱中。ついついおすすめの本を探す方に時間を費やして、肝心の読書に時間をまったく振り向けられていないことを反省。一人で読みこなせなさそうな本を読むために、Audibleを使い始めた。まだ、無料お試し期間で、初めに選んだのかミヒャエル・エンデの『モモ』。山口周さんや磯野真穂さんが出演していたNHKドキュメンタリーで取り上げられていて、興味はあったけど、児童文学を自力で読み上げる自信がなかったのでAudibleでトライ。結果、めちゃめちゃ面白かった!正直、笑える話では全くない(笑)この本をドキュメンタリーの中に登場させているのも秀逸。

 

モモという髪はもじゃもじゃな浮浪児が、ある円形劇場の跡地に住み着きながら、町のみんなと交流していく。諍いがあっても、みなモモに話を聞いてもらうと何故か解決するという、不思議な力をもった女の子モモ。モモはみなの話にじっくり耳を傾け、時間を分け与えている。ところが、ある時町に灰色の男たちが現れ、みなに時間の貯蓄の大切さ、時間を無駄にすることがいかに悪であるかを説き、いつしか町のみなはあくせく働き、昔のようにモモに会いにこなくなってしまう。灰色の男たちは時間泥棒なのだ。

町の人たちの一人、ある床屋さんが、今まではお客さんとおしゃべりをしながら髪を切り、年老いた母の介護にも時間を割き、寝る前にはゆっくり窓辺でくつろいでいた生活を、時間貯蓄銀行員の名乗る灰色の男に、いかに時間を浪費しているかをたたみかけるように詰め寄られ、ついにはお客さんのカットを今までの半分で終わらせ、店の壁には時間の大切さを謳う標語を掲げる様子は、現代の会社そのものだと背筋が凍った。灰色の男たちの論理である、時間を無駄にせず、短時間で多くのことを成し遂げること(いわゆる生産性を上げること)は、まさにどの会社の課題でもあり、本屋に並ぶ時間術の自己啓発本の内容そのものである。私自身が、そういう本を読んで、実践しようとしてきたことでもある。自分は灰色の男たちのマインドに完全に侵されているんだなと痛感。この本1970年代に出版されているけど、50年たった今でも全然色あせてない。すごい先見の明よね、著者のエンデさん。

 

資本主義のシステムの一部として完全に組み込まれている状態で、いかに時間に支配されず、心豊かに過ごしていけるのか。もうこれ以上モノはいらない。コンビニもなくても大丈夫。スマホもないならないで、楽しく過ごしてた。けど、資本主義では常に新しいサービスを提供し、ライバルに先を越されないようにしなければ生き残れない。知らぬ間に望んでもないもの(私にとってはスマホ)が社会インフラとして欠かせないものになっている。今では、そんなものいらなかったお年寄りにまでスマホを使いこなすよう指導しなくてはならない。仏教的な「足るを知る」精神では、ビジネスはできない。一生活者としては「足るを知る」を実践したいから、家を片付け、娯楽産業にお金を使わないように心掛けてはいるが、ビジネスをする方からしたら、それでは経済が回らない。会社で働く身としては、お客さんに一つでも多くの商品を買ってもらわないと困る。なんだか自分でも矛盾していると感じることが多い。

 

まだ読み終えてないけれど、斎藤幸平さんが『人新世の「資本論」』で主張する脱成長コミュニズムは一つの解になるのかしら。